中途採用で来た社員には、新入社員と同じように研修をすべかどうか、悩む会社が多いです。
研修には時間やお金といったコストがかかりますから、これは当然のことだといえます。
特に中途採用の場合、即戦力として雇用しているのが普通です。
となれば、研修など無用なコストをかけずに、すぐに戦力になってもらえることが、会社としての旨みなわけです。
それでは、中途採用者には簡単な研修だけ行って、あるいは全く行わずに、真っ先に実務にあたってもらうのが良いのでしょうか。今回は、中途採用研修の内容について、解説していきます。
1.中途採用者にもしっかりとした研修が必要
実際のところ、中途採用で来た人にすぐに実務にあたってもらい、結果的にすぐに辞めてしまった、ということが多く起こっています。
中小企業の中途採用者について、入社後3年間の離職率は3割を超えるというデータが公表されています(参照:中小企業庁 第2部 中小企業・小規模事業者のさらなる飛躍 http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H27/h27/html/b2_2_2_2.html)。
いくら同じ分野で活躍していた人でも、新たな会社に入って、すぐに業務にあたれ、といわれてもその実力を発揮できることは少ないのが現実です。
新入社員と同様に、中途採用者に対しても充分な研修を行うことが、長期的に見て双方のメリットになります。
2.中途採用社員の研修内容
中途採用者に向けた研修内容としては、まずは業務の詳細を具体的に教えることです。電話の仕方から書類の作成方法、部署の表記や会社組織にいたるまで、最初は慣れないと戸惑うことが多いです。
これらについて、丁寧に教えることが必要です。
2-1. チームワークの構築を重視する
中途採用社員の壁となりやすいのが、チームワークです。個人としては優秀なスキルを持っていても、周りの人とコミュニケーションが取れず、上手に連携できないと、その力が存分に発揮されません。
しかし、新たな仲間ですから、円滑な連携が取るのは難しいです。そこで、社員同士のつながりを重視したフォロー体制が需要になります。
比較的に容易なのは、同じ条件にある者どうしの交流です。すなわち、中途採用者どうしのコミュニケーションです。お互いに初めての環境、という共通の境遇にあることもあって、つながりが生まれやすいです。
(1)既存社員との関係が難しい
難しいのは、既にできている輪の中に入ることです。上司との関係や同僚の人たちとのつながりを構築するのに、ストレスを感じる人がよくいます。
これについては、中途採用者を集めた歓迎会を企画したり、レクリエーション的なものを設置するなどして、業務とは別に親睦を図るシーンがあると効果的です。
2-2. OJT研修は教育担当が必須
中途採用者にはいきなりOJT (On the Job Training=実務研修)を実施して、やりながら憶えさせる、という方式を取る企業がよくあります。しかし、これは非常にハードルが高いです。
実務で教育するにしても、1人担当を決めるのが望ましいです。教育係を付けることで、中途採用者も誰に質問をしたら良いのか分かりますし、この人には聞いても大丈夫なんだ、という気持ちが持てることで、だいぶハードルが下がります。
(1)業務以外の相談スタッフもいると◎
業務についての教育担当だけではなくて、会社内での生活全般について相談できるスタッフを付けるのも有効です。バディ制といわれることも多いです。
バディを付けることで、トイレの場所や昼食、休憩の取り方など、本当に些細な質問もできるようになります。仕事のことではないけれど、こういった日常の問題について、質問できる環境があるのは、ストレスの削減につながります。
■2人のフォロー担当が有効
実務の教育担当との関係は、やはり仕事についての質問ですから、緊張感を持ったものになりやすいです。そのため、文具の置き場所やゴミの出し方など、ちょっとしたことは聞きづらいと感じる人が多いです。
しかし、業務とは別のバディがいれば、それこそ本来、仕事とは無関係なことも気軽に聞けます。これでだいぶ精神的に楽になる方は多いですから、企業としては、業務との教育係と、日常生活のバディの2人を、中途採用者には付けるのが望ましいです。
3.短期的研修と長期的研修
研修は、入社後に1週間程度かけて集中的に行うものと、先に示したようなフォローする人を付けて継続的に行っていくものに分かれます。
3-1. 短期的研修(入社直後)
前者では、主に具体的な実務以外のことを学びます。
たとえば、会社としてのポリシーや理念、従業員として共通に持つべきマインドを植え付けることです。
他に社内の決まりについて、特に他社とは違う点があれば重視して教えます。
実際に入る部署の社員について、自己紹介を受けたり、中途採用者もしたりします。
この入りたての研修は、同様の中途採用社員が複数いる場合には、まとめて行われることが多いです。
これは、単純にコストを削減する意味もありますが、中途採用者同士の横のつながりが密になり、
お互いに教えられたことを確認して、理解度がアップするメリットが存在します。
3-2. 長期的研修
後者はいわゆるOJTの段階で、先述したように教育担当を付けるのがベストです。
実際に業務にあたりながら、ごく基本的なこともすぐに聞ける体制になっていると、
中途採用者が実力を発揮しやすくなります。
それこそ、顧客対応の仕方や名刺の出し方など、新入社員が聞くようなことでも、中途採用者が聞ける環境が良いです。経験があるとはいえ、企業によって初級的なビジネスマナーにも違いがあることが多いからです。
この実務での研修は、特に期間を決めないのが通常です。業務に慣れて、必要性がなくなれば、教育者も付かなくなります。
4.中途採用研修についてまとめ
今回は、特に中途採用者に向けた研修内容について紹介してきました。冒頭で示したとおり、中途採用者については、新入社員のような時間をかけた研修をやらない企業が多いです。
しかし、それが中途採用者の定着率が悪い要因だと指摘されています。やはりどれほど経験豊富で高いスキルを持った人でも、働く環境が変われば、いきなり良いパフォーマンスを披露することは難しいものです。
中途採用社員にも新入社員に近いレベルで、入社時の研修、その後の実務研修と段階を踏んで徹底した教育をする姿勢が、新たな場所で明確なビジョンを持ってもらい、有する能力をいかんなく発揮してもらうことにつながります。