セミナーコラム

人的資本経営とは?目的やメリットと実践方法について解説

最近は、人的資本経営という言葉に注目が集まっており、実際に日本でも人的資本経営経営の情報開示要請が出されて出されています。しかし、具体的にどのように人的資本経営を実践していけばよいのかよいのかわからない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、人的資本経営の目的やメリット、実践方法について詳しく解説します。


<この記事の監修者>

株式会社マジカルクリエイトサービス
大手テーマパークで本物のホスピタリティを学び、実践してきた元キャストを講師として数多くのセミナーを開催。人材育成や学校教育の現場で役立つ知識や技術をお伝えして、これまで数多くの企業や教育施設のパフォーマンス向上に貢献してきた実績を持つ。


人的資本経営とは

人的資本経営とは、従業員を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上を目指していく経営方法です。

「人」が企業にとって重要な資産であり、その能力やスキルを最大化することで、企業の成長を促進するという考え方に基づいています。

人的資源と人的資本の違い

人的資本経営の対極にある考え方として、従来の「人的資源経営」があります。人的資源経営では、人を資源として捉えているため、人件費をコストとして扱い、なるべく人材にかける費用も抑えていくことが考えられていました。また、終身雇用や年功序列などでコミュニティを囲い込むことも人的資源経営の特徴です。

一方、人的資本経営では従業員を資源として考えるため、人件費を「価値を生み出す投資」と考え、データに基づいた戦略的な人材管理を行います。この手法により、企業と従業員が共に成長し、持続的な発展を目指していくのが特徴です。

従来の人的資源の考え方から人的資本への変革の方向性として、2020年版の伊藤レポートでは、その2つの違いを示す対比図を提示しました。以下をご参照ください。

引用:経済産業省「人的資本に関する研究会 報告書〜人材版伊藤レポート2.0〜

このようにNot this(企業経営における人材戦略の現状)と記載された従来の人的資源経営では、コミュニティの幅が狭く、任された業務をただ淡々とこなしていく存在として人材を捉えています。

しかしBut this(あるべき姿)と記載されている人的資本経営では、人材を「コスト」ではなく「未来への投資」として考え、会社のトップが中心になり投資家や従業員としっかり話し合いながら、お互いに選び合って成長していく関係を作ることを重視しています。

人的資本経営が求められた背景

時代の変化により、人的資本経営の必要性が高まっています。

DX化が進む中、定型業務が自動化されていることや経営に関する評価の影響などによって、さらに注目されています。

ここでは、人的資本経営が求められた背景について解説します。

DX化が進む時代の経営戦略

多くの企業でDX化が進められ、定型業務が徐々に自動化されています。業務が見直されていくとともに、従業員に求められる役割も変化しています。

このような時代で企業が「さらなる改革」を生み出すためには、従業員一人ひとりの創造性や問題解決能力が重要になります。

人的資本経営は、こうした「人」の付加価値を最大限に引き出すための視点を強化し、持続的な成長を支える経営戦略としても重要視されているのです。

経営に関する評価の影響

SDGsのような持続可能な開発目標が求められる現代は、企業にも持続可能な発展に向けた取り組みを求めています。

特に「働きがいと経済成長」や「人材育成」を促進することが企業の重要な課題となっており、人的資本経営を実践することで、この課題解決へ向けて貢献できる企業として評価が高まると考えられています。

さまざまな人材や働き方による多様化

非正規雇用や外国人労働者の増加に伴い、日本企業でも人材の多様化が進んでいます。

出勤せずに在宅で業務をこなすリモートワークの増加など、働き方も多様化しているため、従来の人材管理方法が通用しなくなっているのが実情です。

こうした時代では、外国人などの人材や1人ひとりの多様な働き方を尊重しながら、個々の従業員の価値を引き出すための柔軟な経営戦略が必要とされています。

投資家への情報開示の必要性

人的資本経営は、投資家へ開示する情報としての重要性も向上しつつあります。

投資家が投資判断する際には、建物やお金などの「目に見えるもの」だけでなく「人材」などの「目に見えないもの」も重要だと考えています。

そのため、投資家からの評価を高めるためにも、人材育成や働き方の多様化などは重要なポイントです。

人的資本経営のメリット

人的資本経営のメリットは、業務による生産性の向上や従業員の能力を可視化することなどが挙げられます。従業員の成長や企業の利益がアップすれば長期的な競争力も強化できます。ここでは、人的資本経営のメリットについて解説します。

生産性が高くなる

人的資本経営は、従業員への投資を重視します。

企業が積極的に人材へ投資することで、従業員のスキルや能力が向上し、業務の効率や生産性も高くなるでしょう。

また、従業員1人ひとりの成長が企業の利益も増加させ、その利益を利用して、さらに人的資本に再投資するという好循環も生まれます。

従業員の能力を可視化できる

人材育成に注力していくと、従業員の能力やスキル、成長過程が可視化しやすくなります。

そうした情報が可視化できることで、従業員1人ひとりの能力やスキルを最大限に活かせる人材配置ができるようになるでしょう。

戦略的な人材配置を行うことによって、企業全体の業績向上を目指せることも、人的資本経営の大きなメリットになります。

従業員エンゲージメントの向上

人材育成に注力することで、従業員のモチベーションが高まり、企業への信頼も高まります。

従業員に対して成長の機会を多く提供することで、仕事への責任感や自信を持ってもらえるため、離職の低減やエンゲージメントの向上にもつながります。

投資家からの評価が上がる

人的資本経営に積極的に取り組む企業は、市場や投資家から高く評価される傾向があります。

多くの投資家から高い評価を得て注目してもらえれば、投資対象になりやすく資金調達が楽になる可能性も大いにあります。

投資額が増えれば、新規事業の展開や新たな取り組みなど行動の範囲も広がるため、投資家からの高評価は大きなチャンスです。

企業ブランディングの向上

人的資本経営で人材育成に注力する企業は、社会的な信頼を得やすくなります。

人材育成を重視することで「この企業で働きたい」「ここで自分の能力を生かして活躍したい」と思われる企業となり、優秀な人材を集めやすくなる効果も期待できます。

優秀な人材が集まれば、企業の成長にもつながり、社会的信頼も高まるでしょう。

人的資本経営の企業で必要な開示情報

近年、人的資本経営を推進するための法整備も進んでいます。

2023年1月31日に交付された「企業内容等の開⽰に関する内閣府令等の⼀部を改正する内閣府令」によって、上場企業は有価証券報告書において人的基本経営に関する情報の開示が義務づけられました。

人的資本経営で企業で必要な開示情報については、以下の表をご参照ください。

このように人的資本経営に関する情報の開示が義務付けられており、企業の取り組みやさまざまな働き方で変動する賃金格差、委員会活動状況などの開示が必須です。

人的資本経営の取り組む流れ

人的資本経営を実践する際には、経営戦略と人材戦略の連動が必要不可欠です。また、現状と理想のギャップを把握し、企業文化に定着させることも人的資本経営を取り組む中で重要です。

ここでは、人的資本経営の取り組む流れについて解説します。

経営戦略と人材戦略の連動

経営陣は、現在抱えている社内の課題や今後の目標、方向性を統一させなければいけません。

そのために、経営戦略と人材戦略を統合的に考え、具体的なアクションプランを策定することが重要です。

現状と理想のギャップの定量把握

人的資本経営では、現状と理想のギャップを定量化し、その差を埋めるための人材戦略を立てることが重要です。

現状と理想のギャップを客観的に把握できることで改善点や課題点を分析して、経営戦略が立てられます。

企業文化への定着

人材戦略を実践する際は、企業文化に対する定着が必要です。

なぜなら、企業文化を全体で統一し、共に作り上げていくことで企業がさらに成長していくからです。

そのため、企業理念や行動指針を従業員に共有した後も、企業文化を理解した上で業務に携わっているか定期的に見極めることが重要です。

人的資本経営では人材育成が鍵になる

人的資本経営を成功させるには、人材戦略が重要です。

人材育成を計画的に行い、従業員が持っているスキルや能力を伸ばすことが、会社全体の成長にもつながります。

マジカルクリエイトサービスでは、新入社員研修の他に、社員向け企業人財育成サービスも実施しております。

通常の社員教育やビジネスマナー研修とは異なり、人が組織で最大限の力を発揮するために必要なことを日本一のテーマパークの教育ノウハウに沿ってお伝えします。

会社経営者や人材育成担当の方で、人材育成を強化したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

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